ゆっくり、話そうか。
モテモテやな。

胸は痛むがどうしようもない。
みんなに平等にチャンスはあるのだから。

しかし、自分にはもう残っていないことを逆に痛感させられてしまい、痛む胸は治まりそうにない。
誘い出されている様子ではあるものの、その場で断っているらしいのがせめてもの慰め。

「やよい、あっち行ってお菓子食べよ?」

やよいの心痛を悟った万智が気を遣って、この場所から逃がそうと誘い出す。

「いいよ、大丈夫。それより万智、せっかくのキャンプファイアなんやから彼氏んとこ行ったげたら?ほら、むっちゃこっち見てるで?」

日下部の隣、女子に埋もれながらも尚太がずっと万智を見ていた。
さっきの一件から万智に冷たくされているのだろう、へこみモードがハンパない。
万智を独り占めしていたら申し訳ないくらいに。

「いーのっ、尚ちゃん酷いことしたし、やよいもまたどっか行っちゃうかもしれないもん」

「行かへんて。な?彼氏とも思い出作っておいでよ。私はもう充分楽しんだから。写真も一杯撮ったし」

やよいにベッタリくっつき、唇を尖らせていた万智が尚太の方へ目をやる。
すると尚太が手を振り、お願いと言わんばかりに情けない顔をしているのが遠くからでも見て撮れた。
まるでご主人に尻尾を振っている忠犬だ。

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