ゆっくり、話そうか。
しばらく考え込んだ後、抱きついていた万智がやよいから離れ「わかった」と尚太に手を振った。
オッケーをもらえた尚太はガッツポーズをして男子の輪から離れ、万智を手招きして読んだ。

「すぐ戻るからね!」

「ごゆっくり」

何だかんだで嬉しそうに駆け寄る万智に手を振って、二人が合流するまで見送った。

さて、
一人になってしまった。

別にひとりぼっちでいるのは問題ない。
ただ情けないことに、日下部の存在を打ち消す友達がいなくなると少し不安になる。
だからといって無理に別のグループに混ざる気にもなれず、テーブルに用意された食料目当てにそちらへ移動した。
ポテチにチョコ、定番のお菓子の山と、これまた定番のソフトドリンクが用意されている。

カルピスコーラ飲みたい。

紙コップを手に取りカルピス原液とコーラをいい具合になるよう注ぐ。
一口含み…、

うん、
薄い。

家ではもったいないので薄めに調整するが、今日は飲み放題に食べ放題。
遠慮なんかもったいなくなり、誰も見ていないことを確認してから原液の量を増やした。

うわぁ、
贅沢やぁ。

濃厚カルピスコーラを飲み干し、こっそりゲップする。
まるで親父の行動に自分でも笑えた。
もう一杯おかわりを作り、今度はゆっくり味わおうとキャンプファイアの方へ体を向けた。
自然と日下部を探してしまうのは、しばらくどうにも出来そうにない。
やれやれだが付き合うしかなさそうだ。
キャンプファイヤそっちのけではしゃぐみんなの姿を眺めながら、いい思い出に胸が熱くなった。
青春しているとはこの事だろうか。

無邪気にはしゃいでいる声やBGMに合わせて歌う声、あちらこちらで踊っているグループもいて、届く音はどれもたまらなく歓喜に満ちていた。
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