ゆっくり、話そうか。
産まれて初めての告白。
経験の無いことにどうしたらいいか分からない。
頭の回転が追い付かず半ばパニック。

いや、ちょっと待てよ?
もしかしたら、ベタやけども、どっかに一緒に付き合ってくれってことかもしれんやん?

落下したお菓子を拾いながら別の可能性に目を向けた。
最近恥ずかしい思いをしすぎているため、少しでも避けられる恥は減らしたい。
意を決したやよいは「確認やけど」と切り出した。

「付き合う?って、あの、彼女にしたいってこと??」

「うん。そうなんだけど、ダメ、かな?」

まさか質問が返ってくると思わず、しかもなかなかストレートな返球に横山も驚いている。
彼女にしたいという意向で間違いはなかった。
だが答えはもう決まっている。
気持ちにはきちんと、自分が言われても傷付かないようにしたい。
コップとお菓子を机に置き、横山にしっかり向き直ったやよいが深々と頭を下げた。

「はい、ダメです。ごめんなさい。好きな人がいるので付き合えません。彼氏ではないし彼氏にはなり得ませんが、その人しか好きじゃないのでごめんなさい」

自分でも清々しくなるほど、はっきり断った。

「…すごいはっきり言われちゃった…。んー、そっか、うん…、そっか、…わかった」

納得した横山が「ありがとう」と微笑み、足早に去っていく。

「あ、でもありがとうっ!嬉しかったから!」

誰かに求められるということはこんなにも心が穏やかになるものなのか。
初めて知った感覚、初めて教えてくれた横山に精一杯の感謝を伝えた。
横山はなにも言わずに頷き、やよいに手を振って走り去った。
やよいも振り返し、姿が見えなくなるまで見送った。

うわぁぁ、あれが告白かぁ。

一度でいいから経験したいと思っていたが、まさかこんな形で訪れるとは予想だにしていなかったため、出遅れた心臓が今頃ドキドキわめきだした。

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