ゆっくり、話そうか。
困惑、にも似た瞳が真正面から見据えてくる。
だからといって探す気満々で立ち上がった今となっては、引くにも引けない。
それに、

「けど、園村さん見つけるまでここで探すよね。夜になっても夜中になっても」

やよいがまとっている空気は強気で、途中で諦めてすごすご帰るという選択肢は思いつかない。

「ん、ぅ、ん」

夜中までには探し出す、けど、モゴモゴと答える。

「で?もし変な人が来て何かしらの事があったりしたらどうすんの?俺むちゃくちゃ後味悪いじゃん。なんであのとき娘を置いて帰ったんですか、とか園村さんの親に責められるじゃん」

「多分親には責められへんと思う…」

「誰かしらに責められるでしょ、俺が。そうなるくらいなら探した方がデメリットが少ないんじゃない?俺の。園村さんが夜中までスマホ探さなくてすむし」

自分への迷惑の度合いをプッシュすれば返事も変わると思ったが、

「えー…嫌やなぁ」

嫌を連発されるとさすがにいい気がしない。
だが、やよいの方もやはりすんなりお願いする気にはなれない。
モヤっとが色濃く大きいのだ。

俺の事好きって言ったんじゃなかった!?嫌じゃないだろっ!と、人間のみっともない部分が言わせそうになって、無理矢理引っ込めた。

「暗くなってきたし言い合っててもしかたないから探すよ?どの辺?」

とうとう根負けしたやよいが、飛んでいったであろう場所を指差した。
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