ゆっくり、話そうか。
ほんとに、
表情がくるくる変わる。
さっきまで俺に傷つけられて泣いてたのに。

自分でやっといてよく言うよと、日下部が自嘲気味に微笑んだ。

「そうだね、でも…」

両手で頬を包み、強引より弱い力で上を向かせたやよいの唇に、日下部はなんの躊躇いもなく自分の唇を合わせた。
驚いたやよいからまばたきの音が聞こえる。

「結果は違う…」

重なったまま囁かれた言葉がダイレクトに、放心したやよいの鼓膜に入ってくる。
もう一度重ねられ、どこか心地のいい感触にやよいが目を閉じた。
ほどなくして、唇が離される。

頭がふわふわする。
これがキスの威力?なんかな…。

落ち着かないゆらゆらした頭でそんなことを考える。
思考どころか、もうなにも考えたくなかった。

そして───

「え、園村さん?」

日下部の胸にダイブしたかと思うと、やよいはそのまま意識を手放してしまった。
焦る日下部の声を聞きながら、この日最後に考えたのは“ファーストキスはきな粉の味”ということだった。









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