魔女は天使の声色で囁く
〈私の友達は興梠さんが好きなんです。〉
ラジオではパーソナリティの赤川蘭子が声を荒立てている。
〈つまり、バッタさんよりコオロギさんが好きなんですねぇ。〉
相方のパーソナリティ延岡動は少し慌てた口調でフォローを入れた。
この時、興梠修一郎は車の中で〈虫の話なんだ〉と軽く聞き流した。
修一郎の運転する車はアルバイト先のコンビニに着いた。従業員専用の狭い駐車場から店内に入りバックヤードで制服に着替えていると同じ勤務シフトのミクが
「興梠さん、さっきラジオで名前呼ばれましたね。」
と話し掛けてきた。
「本物のコオロギの話だよな。」
と修一郎はミクに言い返す。
「違うと思いますよ。だって昨日、赤川さんは興梠さんがよく行くスーパーにいましたから。それにしゃべっていた相手は例の彼女です。」
修一郎は言葉が続かなくなった。例の彼女、つまり内広舞は昨日レジで泣き出してしまったのだ。
ラジオではパーソナリティの赤川蘭子が声を荒立てている。
〈つまり、バッタさんよりコオロギさんが好きなんですねぇ。〉
相方のパーソナリティ延岡動は少し慌てた口調でフォローを入れた。
この時、興梠修一郎は車の中で〈虫の話なんだ〉と軽く聞き流した。
修一郎の運転する車はアルバイト先のコンビニに着いた。従業員専用の狭い駐車場から店内に入りバックヤードで制服に着替えていると同じ勤務シフトのミクが
「興梠さん、さっきラジオで名前呼ばれましたね。」
と話し掛けてきた。
「本物のコオロギの話だよな。」
と修一郎はミクに言い返す。
「違うと思いますよ。だって昨日、赤川さんは興梠さんがよく行くスーパーにいましたから。それにしゃべっていた相手は例の彼女です。」
修一郎は言葉が続かなくなった。例の彼女、つまり内広舞は昨日レジで泣き出してしまったのだ。
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