敏腕パイロットは純真妻を溢れる独占愛で包囲する
エピローグ 総司の真実
 青白い月が楽園の夜を照らしている。
 ベッドボードに背を預けて、総司はすーすーと可愛い寝息を立てている可奈子の寝顔を見つめている。
 艶のある黒い髪、ベルベットのような眉、真っ白い柔らかな頬。
 ついさっきまで思うままに触れていたというのに、またすぐに欲しくなってしまうほど、総司の心は彼女に囚われている。眠る彼女のこめかみに唇を寄せそのまま大きく息を吸うと、華のような香りが総司の脳裏に広がった。
 今胸を満たすのは、愛おしい可奈子と本当の意味で夫婦になれたのだという満足感だ。はじめて彼女を抱いた夜も似たような気持ちを抱いたが、それとは比べものにならないくらい確かなものを感じている。
 総司の日記を可奈子が偶然目にしたことで始まった一連の騒動には、総司自身も大きく動揺させられた。だが、思い返してみれば、結果的にはよかったのかもしれないと今は思う。
 雨降って地固まる。
 こうしてふたりの絆が深まったのだから。
 この旅で、可奈子は随分と総司に対して心を開けるようになった。
 ほんの少し予想外の出来事はあったもののすべてはいい方に転がった。とはいえ、夫婦としての道はまだ始まったばかり、これからずっとそばにいるのだ。なにが起こるかわからない。
 だから……。
 総司はサイドテーブルに置いてある黒い革のノートを手に取って今日の日付を記入した。

《ここまでは、概ね計画通り。でもまだ油断は禁物。これからも可奈子を愛し続ける》
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