夕立とアイスとこーちゃんと♡
いつ見ても、イケメンだと思う。整いすぎた顔はもはや芸術でしかない。
……と、いうわけで、目の前には芸術作品の弾けんばかりの笑顔。
それだけで釘付けになって、目が逸らせなくなるんだから、人間って正直だ。
『……何?』
「別に!」
『ま、いいや…仕方ないから、大音ちゃん、一緒に帰ろ?』
「え?」
『それ、使おっか?』
「えぇぇ?……本気で二人で入る気?」
『駄目なの?』
「駄目っていうか…」
絶対、嫌がると思ってたんだけど…。
机の上に置かれた吉田の傘を手に取ると、帰り支度を始める。
吉田が、『キャアー!!しずー!!』とか、ときめいているけど、雑音でしかない。
それから、少しばかり小雨になったのを見計らって、外に出た。
『はい、入れてあげるー』
「私が借りたんだけど?」
『俺の方が背高いし。手も長いって……見た感じな』
「何そのため息!?私が短いみたいな言い方やめてよ!!」
何かと失礼な男に、文句を言ったところで、どこ吹く風で知らん顔。
何これ?あっちばっかり平常運転でむかつく!!
そして、数メートルほど歩いたところで、新事実が発覚。緊張は更に増す。
二人で一つの傘、というのは、思いの外、距離が近い…。
それどころか…、身長差で肩と腕が触れ合ったりもするわけで…。
「近くない?」
『そ?』
「あのさ…、もうちょっと…」
『え、ぎゅってしてほしい?』
「言ってないから!!」
思わず、声を荒らげれば、あっはっは…!!、と極上の笑顔が返ってくる。
「なんかこーちゃん、機嫌良いね…」
『かもね』
「こんなの絶対嫌がりそうなのに、色々と意外…」
『うん。大音ちゃんとじゃなきゃ、絶対しない』
そんな台詞まで飛び出してきちゃうから…。