夕立とアイスとこーちゃんと♡


お店を出ると、外は小雨。さっきまでの豪雨が嘘の様だ。

そんな穏やかな雨のなか、先程と同じように一つの傘にくっついて入っている…とか、冷静さを取り戻した分、恥ずかしくてしょうがない。

だけど、今はそれ以上に、気になることがあって…、



「忘れてた…、シャツ返す…脱ぐ…」

『いや、着とけよ』

「でも、しわしわだし…」

『皺はよくね?』

「それに、ダボダボ…」

『ん、それな…』

「こーちゃんって、案外、大きいね。背丈はともかく、肩幅とか…。細いから、こんなブカブカになると思わなかった」

『当たり前じゃん。性別違うんだから…』



途中で言葉を止め、切れ長の目を細めて逸らす。で、ちろり…とこちらを見る。

またしても、予想と違う反応が返ってくるから、なんだ?なんだ?と思っていれば…。



『この前、晴人が騒いでたけど、悪くないよね』

「……は、何が?」

『成瀬に…………てか、大音ちゃんが華奢すぎるんだよ。ちゃんと食べてんの?』

「え、なんで急に話変えたの?亜美が何?」

『………』



何とも言えない表情で無言…。

なんなの?聞いちゃいけないことでもありました?

いや…でも、こーちゃんが始めたんだよね?



その、整いすぎた澄ました顔を、怖々と見つめていると…。



『説明するから、ここでキスするのと、今度、家来た時に俺の服着るのと、どっちがいい?』

「は?何言ってんの?」



突拍子もない選択肢につっこんだところで、芸術作品は表情を変えない。

しかも…、



『むかつくよね…大音ちゃん…』



なぜか暴言を吐き、じーっと、私を見つめる……。



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