未来万博
「未来万博」
「光が丘学園」の入学式を終えて数日が経(た)った。
白い校舎から出てきたわたし早乙女ゆかりは、
校門を出て、帰路にある白い外装の「乙女カフェ」に入った。
私は、明るく長い髪のセブンティーン。
ちょっぴりソバカスがあるんだ。
けどね化粧も練習中だし、うまく隠せてると思う。
今日はね、クラスメイトの花井かおりとここでお茶をするの。
「あぁ、かおり、ここ」
「ごめん、職員室に寄る用事が長引いちゃって、あぁ、オーダーお願いしますぅ」
ストレートの美しい黒髪に眼鏡の良く似合うつぶらな瞳のかおりは、白椅子に腰かけて、
消毒スプレーを、手に少し吹きかけた。
同じぐらいの年の女性店員がやってきたので、私達は、レモンティーを二つ頼んだ。
「かおり、お茶はするの、初めてだね」
「うん、今日は付き合ってくれて、ありがとうね」
「こちらこそ」
私は、得意のウィンクでかおりを見つめた。
「そう、大阪万博のキャラクターが決まったね。でも、あれ、すごく気持ち悪いよね」
「えっ、ゆかり、あなた、カンがいいわね」
「ど、どうして?」
「実はね、そのことなの、話したいことって」
急に店内が騒々しくなった。不良っぽい子たちが入ってきたからだ。でも、私達は女子高だけあって、
いかつい男子の番長グループとかは、ここには来ないから、他校よりは、騒がしくないと思う。
私達の学校も、近所にあるこのカフェに出入りする人達も。
「関西・大阪万博のキャラクターってね、どうも、何か意味があるみたいなのよ」
かおりの言葉を挟み、「お待たせしました~」と、
レモンティの到着。
「話の途中だけど、来た来た、ここのお茶。可愛いウサギ型のチョコが付いてきて、可愛いね」
私は、ウサギチョコを、指先でチョコっと突いた。
「そうだね」
「まずは、飲みましょう」
「そうしましょう」
私は、ストローに唇を、ゆるりと寄せた。
「で、意味って、何? どんな意味があるの?」
「私ね、二つ上のお兄ちゃんがいるんだけどね、その兄が、昨日、あるセミナー?
講演会かな、に参加して、そこで、聞いてきた話なの。それで帰宅後、私に話してくれたんだけど」
「なに、なに、それで、どんな話だったの?」