一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
耳元で囁く声に、美晴の体がビクリと反応した。とっさに見上げると、にこやかな微笑みを浮かべて名取が美晴を見つめている。
「浅川さん、駐在大変だと思うけれど頑張ってね。なにかあったら、相談してください」
「……ありがとう、ございます」
美晴がそう言って、もう一度頭を下げる。名取は手を軽く振ると、先に歩いていった仲間に合流するため去っていった。
◇◇◇◇◇◇◇
「戻りました」
「美晴さん、お帰りなさーい」
三十分後、美晴は駐在先へと戻った。迎えるのは陣内《じんない》 理恵。小柄で色白で目鼻立ちがはっきりして、ふわふわパーマがどこかマルチーズを連想させる、可愛い後輩だ。美晴は目下この理恵に仕事を引き継ぐべく、指導をしているところだった。
「ミーティング、どうでした?」
「特に目新しいことは無いかな。でも先日のマニュアル改訂の件、印刷もらったから渡します。後で解説するけど、その前にお昼食べに行ってもいい?」
抱えた荷物をデスクの上に置くと、美晴がレジ袋を理恵に掲げてみせた。
「あれ? 今日はお手製弁当じゃないんですか」
「うん。荷物になるの、分かっていたし」
「確かに。ってそれ、『和ちゃん』のおにぎりとお惣菜ですね」
遠慮なく袋を覗き込むと、理恵の声が弾んだ。
「この時間でも、おにぎり残っていたんですね。数が少ないから、すぐ売り切れちゃうのに」
「奇跡の一個が残ってたのよ。じゃ、社食で食べたらすぐ戻ってくるから、よろしく」
「あ、美晴さん」
さっさと済ませてしまおうと、社員食堂に行こうとしたところを理恵に呼び止められる。振り向くと、何故か心配そうな顔で美晴のことを見つめていた。
「顔色、良くないですよ。本社でなにかありました? ちゃんときっちり一時間休憩取ってくださいね。早目に切り上げるの禁止」
「理恵ちゃん、ありがとう」
後輩の優しさに、美晴はにこりと微笑む。その一方で、理恵の勘の鋭さにも驚いていた。人をまとめる立場に立つ以上、これ以上後輩に気を使わせるわけにもいかない。
「それじゃあ一時間後に、よろしくね」
「浅川さん、駐在大変だと思うけれど頑張ってね。なにかあったら、相談してください」
「……ありがとう、ございます」
美晴がそう言って、もう一度頭を下げる。名取は手を軽く振ると、先に歩いていった仲間に合流するため去っていった。
◇◇◇◇◇◇◇
「戻りました」
「美晴さん、お帰りなさーい」
三十分後、美晴は駐在先へと戻った。迎えるのは陣内《じんない》 理恵。小柄で色白で目鼻立ちがはっきりして、ふわふわパーマがどこかマルチーズを連想させる、可愛い後輩だ。美晴は目下この理恵に仕事を引き継ぐべく、指導をしているところだった。
「ミーティング、どうでした?」
「特に目新しいことは無いかな。でも先日のマニュアル改訂の件、印刷もらったから渡します。後で解説するけど、その前にお昼食べに行ってもいい?」
抱えた荷物をデスクの上に置くと、美晴がレジ袋を理恵に掲げてみせた。
「あれ? 今日はお手製弁当じゃないんですか」
「うん。荷物になるの、分かっていたし」
「確かに。ってそれ、『和ちゃん』のおにぎりとお惣菜ですね」
遠慮なく袋を覗き込むと、理恵の声が弾んだ。
「この時間でも、おにぎり残っていたんですね。数が少ないから、すぐ売り切れちゃうのに」
「奇跡の一個が残ってたのよ。じゃ、社食で食べたらすぐ戻ってくるから、よろしく」
「あ、美晴さん」
さっさと済ませてしまおうと、社員食堂に行こうとしたところを理恵に呼び止められる。振り向くと、何故か心配そうな顔で美晴のことを見つめていた。
「顔色、良くないですよ。本社でなにかありました? ちゃんときっちり一時間休憩取ってくださいね。早目に切り上げるの禁止」
「理恵ちゃん、ありがとう」
後輩の優しさに、美晴はにこりと微笑む。その一方で、理恵の勘の鋭さにも驚いていた。人をまとめる立場に立つ以上、これ以上後輩に気を使わせるわけにもいかない。
「それじゃあ一時間後に、よろしくね」