一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
「始め方を間違えたんです。俺は先に、好きだって言わなければいけなかった。美晴さんが好きだから、抱いた。でもそれを美晴さんに伝えていなかったんだって、気付いて。……すみません」
「あ、いえ」

 どう返してよいのか分からない。健斗も落ち着きなく視線をさまよわせる。

「美晴さんが、どんな考えで俺を誘ったのかは理解しました。それで俺と寝て、分かったことって結局なんだったんですか」
「分かったこと……」

 自分が、肉欲だけで満足するタイプなのか、もっと深い結びつきを追い求めるタイプなのか。

「井草さんを自分の都合で勝手に利用して、申し訳無い気持ちが先で、なんかそこまで考えが至らないというか……」
「不快では、なかったんですよね」
「それは、まあ」

 不快どころか、気持ちは良かった。行為の最中、健斗は美晴がいかに気持ちよくなってくれるかに集中してくれた。だからこその申し訳無さにつながるのだが。

「俺に、チャンスをくれませんか?」
「チャンス、ですか?」
「きちんと好きだと伝えてから、誘いに乗ればよかったなと思って。だからお互い知り合うところから、やり直したいんです」
「それはどういう」
「俺と、付き合って下さい」

 ハッキリとした声でそう言うと、健斗はもう一度美晴を見つめた。

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