一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
「お酒自粛中って、言えなかった……」
不安げな表情で美晴がつぶやく。その動揺振りに健斗は少し考え込むと、ゆっくりと口を開いた。
「これを機に解禁しますか、お酒?」
「え」
あの夜、どのくらい酒を飲めばどうなるのか分かった上で、美晴は飲んで健斗を誘った。健斗もその誘いに安易に乗ってしまった。この自粛はそんな風に酒を利用したことを互いに反省してのものだ。
「自粛って、別に期限決めた話ではなかったなと思って。俺たちこのままだと永遠に昼にしか会えなさそうなんで、そろそろ解禁出来たらなと」
「まあ、確かに」
健斗の説明にうなずくと、美晴が視線をさまよわす。そしてそっぽを向いたまま、小さく言った。
「……私も、健斗と一緒にご飯食べたいし」
頬が赤く染まっていく。美晴のそんな態度に健斗の鼓動が跳ねた。
「美晴さん、それって」
「あ」
「あ?」
「それに、あの二人にお酒自粛中なんて言ったら、絶対に理由を聞いてくるよね!」
直前の雰囲気を跳ね飛ばす勢いで振り向くと、美晴が真剣な表情で聞いてきた。確かに陽平と理恵がタッグを組んで美晴を取り囲んだら、ありとあらゆることを白状させられるのは容易に想像ができる。
「まあ確実に、聞いてくるとは思うけど」
「二人がかりで尋問されたら、色んな意味で私が耐えられない。お酒、解禁しましょう」
その勢いに、健斗は小さく吹き出してしまった。
「でも酒を飲むときは気を付けて下さい」
「分かってます」
「俺がいないところで飲むときは、せめて同性だけの集まりに限定してくれれば嬉しいです」
言いながら、露骨に独占欲を出しているなと健斗は思う。二週間振りで会うせいか、どうも自分の感情を抑えることが上手くできない。
「うん。心配してくれて、ありがとうね」
そんな健斗の気持ちを知らずに、美晴が嬉しそうに微笑んだ。その素直な表情に、なぜか罪悪感がわいてしまう。
「……なんか、すみません美晴さん」
「なにが?」
「持ってきたぞー」
呼びかける声が聞こえて振り向いた。戻ってきた陽平がプラスチックのカップが刺さったホルダーを両手で持ち、理恵がそのカップをテーブルに置いていく。数十分前に会ったばかりとは思えない、息のあったその動きに健斗は感心した。
不安げな表情で美晴がつぶやく。その動揺振りに健斗は少し考え込むと、ゆっくりと口を開いた。
「これを機に解禁しますか、お酒?」
「え」
あの夜、どのくらい酒を飲めばどうなるのか分かった上で、美晴は飲んで健斗を誘った。健斗もその誘いに安易に乗ってしまった。この自粛はそんな風に酒を利用したことを互いに反省してのものだ。
「自粛って、別に期限決めた話ではなかったなと思って。俺たちこのままだと永遠に昼にしか会えなさそうなんで、そろそろ解禁出来たらなと」
「まあ、確かに」
健斗の説明にうなずくと、美晴が視線をさまよわす。そしてそっぽを向いたまま、小さく言った。
「……私も、健斗と一緒にご飯食べたいし」
頬が赤く染まっていく。美晴のそんな態度に健斗の鼓動が跳ねた。
「美晴さん、それって」
「あ」
「あ?」
「それに、あの二人にお酒自粛中なんて言ったら、絶対に理由を聞いてくるよね!」
直前の雰囲気を跳ね飛ばす勢いで振り向くと、美晴が真剣な表情で聞いてきた。確かに陽平と理恵がタッグを組んで美晴を取り囲んだら、ありとあらゆることを白状させられるのは容易に想像ができる。
「まあ確実に、聞いてくるとは思うけど」
「二人がかりで尋問されたら、色んな意味で私が耐えられない。お酒、解禁しましょう」
その勢いに、健斗は小さく吹き出してしまった。
「でも酒を飲むときは気を付けて下さい」
「分かってます」
「俺がいないところで飲むときは、せめて同性だけの集まりに限定してくれれば嬉しいです」
言いながら、露骨に独占欲を出しているなと健斗は思う。二週間振りで会うせいか、どうも自分の感情を抑えることが上手くできない。
「うん。心配してくれて、ありがとうね」
そんな健斗の気持ちを知らずに、美晴が嬉しそうに微笑んだ。その素直な表情に、なぜか罪悪感がわいてしまう。
「……なんか、すみません美晴さん」
「なにが?」
「持ってきたぞー」
呼びかける声が聞こえて振り向いた。戻ってきた陽平がプラスチックのカップが刺さったホルダーを両手で持ち、理恵がそのカップをテーブルに置いていく。数十分前に会ったばかりとは思えない、息のあったその動きに健斗は感心した。