一夜限りと思ったワンコ系男子との正しい恋愛の始め方
 健斗の囁きに美晴がうなずくと、さっそくTシャツを脱がされた。上半身があらわになった途端、健斗が乳房にむしゃぶりつく。直接舐め、しゃぶられ、吸われて、その刺激にあえぐことしか出来ない。健斗は口を忙しく動かしながら、次は美晴のスウェットを脱がそうとする。美晴もそれに協力するため腰を浮かし、ショーツごと脱げたスウェットは健斗によって床に放り投げられた。

「綺麗だ」

 膝立ちとなった美晴を眺め、健斗がつぶやく。体の線をなぞりながら手を下ろしてゆき、足の付け根まで行くとゆっくりと合わせ目に沿って指を奥へと潜り込ませる。

「あっ……」

 くちゅり。水音が響いた。

 その反応に健斗がさらに指を動かそうとするが、美晴が足に力を入れて止めさせる。

「健斗も、脱いで」
「分かった」

 美晴のお願いに、健斗が躊躇いなく脱いでゆく。カーテンで閉ざしていても光は差し込んでくる、今はまだ日曜日の朝。それなのに、朝日の中で裸になって体を重ねようとしている。二人の気持ちの高ぶりに気恥ずかしさもあるが、それ以上に幸せを感じている。

「美晴さん」

 そっと名を呼ばれ、また口付けられた。

「うん、健斗」

 横たわった美晴に健斗がゆっくりと覆いかぶさる。それを迎い入れるように彼の首に腕を絡め、今度は美晴から口付ける。舌を入れると健斗の口内を(ねぶ)ってゆく。そのお返しとばかりに健斗の手が美晴の下腹部をまさぐり、濡れそぼった蜜壺に近付いた。これから入る場所を確かめるように、ぐるりと縁をなぞられる。そして人差し指で左右に小刻みに揺らしながら、親指でクリトリスを優しく撫で上げられた。

「はぁっ、あんっ」

 刺激に反応して、腰が動く。健斗はさらに指の動きを細かくし、美晴の快楽を煽ってゆく。水音が絶え間なく聞こえ、美晴の快楽を追う神経がさらに鋭敏になっていった。

 いつの間にか左右に振っていた指は二本に増やされ、入り口を出し入れする動きに変わっている。目の前がチカチカして、火花が散る。

「あーっ」

 身の内から欲望が膨れて弾け、健斗の手のひらに恥丘を押し付けて、美晴が達した。

「イッた? 美晴さん」
「……うん」


 くったりとした体をベッドに沈め、コクリとうなずく。そんな美晴を見て、健斗が満足そうに微笑んだ。なにも言わないのに、嬉しいとか楽しいとか、そんな気持ちでいるのが雰囲気で伝わってくる。

 美晴はそっと目線を下ろすと、健斗の股間を確認した。しっかりと勃ち上がり主張するものがある。自分の乱れる姿を見て、健斗が興奮してくれる。それは嬉しいことだけれど、彼自身へ刺激が与えられていないことが美晴は気になった。

「健斗も気持ちよく、なろ?」

 そう言って、陰茎へと手をのばす。指で触れた途端、健斗がビクリとして目をつむる。先端からは露がこぼれ、そっと扱くとそれが潤滑油になって湿った音を立てた。

 健斗の表情。息遣い。些細な反応に注意を払い、指の動きに強弱をつけて彼の欲望を扱き、煽ってゆく。

「ね、気持ちいい?」

 耳元でそう囁くと、その声にも快感は高められたのか、手の中で彼が跳ね上げた。そして気を静めようとして息が吐き出される。

 嬉しい。

 自分のすることで、健斗が気持ちよくなってくれる。その反応に嬉しくなる。だが、

「美晴、さん」

 切なげにそうつぶやくと、健斗は美晴の手首をそっと掴み、動きを止めさせた。

「え」
「俺のはもう十分だから」

 そんな訳はない。それなのに途中で止めさせられたのは、なにか不快なことでもあったのか。そういえば前回も、美晴が口でしようとしたのを拒否された。

「だめ、だった……?」

 一気に不安になり、美晴の表情が強張る。それに気付いた健斗が慌てて美晴を抱きしめた。

「違う! そうじゃなくって、あの」

 そこで一瞬だけ言いよどむと、健斗は腕の力を弱めて美晴の顔をのぞき込んだ。

「俺のことより、美晴さんを気持ちよくさせたいんだ。だから、されるよりするのに集中したくて……」

 言いながら、顔がどんどんと赤くなり、美晴を見つめる視線が揺らいでゆく。そんな分かりやすく照れる健斗に、美晴の方がもう目を離せない。

「えっと、なので、美晴さんも俺に集中して?」

 そんな風にお伺いを立てられて、美晴も一気に照れてしまう。

「なんか、めちゃくちゃ愛されている……」

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