恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
「せっかくだから、並ばない?」
急に小桃さんが、声をかけてきた。
「今からイベントで、F−2のコクピットに体験搭乗できるわ。現役戦闘機のコクピットに座れるなんて、めったにないチャンスよ」
私たちは小桃さんのお勧めで、ハンガーの前の人の列に並んだ。ハンガー前の人だかりはこの体験搭乗が目当てだったようで、搭乗待ちの列は長く伸びて、幾重にも折れ曲がっていた。
私たちは、その一番後ろに並んだ。
「あれから、何もない?」
小桃さんがさり気なく訊いてきた。
今日ここに来た本当の目的は、哲也との件の相談だから。
「クラスでは目を合わせないようにしています。向こうも、私を避けている感じで……」
あの日、自宅に帰ってから直ぐに、桧山さんに渡された電話番号に掛けてみた。
桧山さんは「何か困ったことがあった
ら」と言っていたけど、とにかく誰かに相談したかったのと、永瀬さんが何者なのか知りたかった。
私が電話をかけたら、呼び出し音が3回鳴った後に、若い女の人の声が返ってきた。
『はい、永瀬です。もしかして、さくらちゃんかしら?』
桧山さんはあれから直ぐに、永瀬さんに連絡を入れておいてくれたらしい。
簡単なやり取りの後で、永瀬さんは、
『せっかくだし、基地祭に来たら? 気分転換になるし、桧山さんも私も、そこなら来訪客とお話していても、誰にも咎められないから』
そう言って私を誘ってくれた。
一人で行こうか迷ったけど、結局萌音に全て話して、二人で行くことにした。