恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜

 シャワーから上がると、部屋着に着替えた桧山一尉が、暖かいカフェ・オ・レを淹れて待っていてくれた。

 リビングにはソファー兼用のベッドが一つと、小さなデスクと本棚が一つ。
 そしてデスクの上には、パソコンが一台。

 そんな何もない部屋で、私は壁を背にベッドに腰掛けて、一尉はデスクチェアに座った。

 今の私は、上は一尉のぶかぶかの白いワイシャツと、下は黒のトレーニングパンツをスパッツ代わりにはいている。
 もし今、一尉が急に立ち上がって、私に覆いかぶさって来たら──。
 
 想像だけで茹で上がってしまっている私に、桧山一尉は話かけてきた。

「俺を探していたのか?」

 私は真っ赤な顔のまま、頷いた。

「永瀬に相談できないようなことでも、あったのか?」

 桧山一尉は、小桃さんの名前を出した。
 私がまた哲也に酷いことをされたとでも思っているのだろう。

 何と言ったらいいんだろう?

 あなたが好きですとか、付き合ってくださいとか、そんな言葉ではとてもこの人の心に届きそうにない。

 必死で頭を働かせて、私が口にした言葉は、こうだった。

「私にバスケを教えてほしいんです。桧山さん、バスケ部のエースだったんでしょう? 私、次の地区大会で絶対に優勝したいんです」
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