恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
準備運動を終えると、桧山一尉が言った。
「ボールを入れて動いてみよう」
まず桧山一尉が左、私が中、萌音が右でエンドラインに3人並んで、左スタートでドリブルで持ち込む。
そして左から中、中から右と、ドリブルとパスでボールを繋いで、最後にパスを受けた右の人がシュートを打つ。
シュートを打ったら、今度は反対側のエンドラインから、右スタートで同じことを繰り返す。それでワンセット。
ワンセット終えると時計回りに位置をローテーションさせて、同じ練習を続けた。
ドリブルは大好きだ。
身体全体でボールコントロールしながら、上体は揺らさず、下半身はしなやかに足全体でコートを蹴って、風のようにゾーンに飛び込む。
一尉がドリブルからパスを出す。それを受け取り大きくステップ──呼吸を合わせて、ジャンプ!
空中で私の手から離れたボールは、小さな放物線を描いて、吸い込まれるようネットを揺らした。
「ナイッシュー、さくら!」
萌音の声がコートに響く。
次は一尉の番だ。
私が左からドリブルスタート、パスを萌音に廻して、ドリブルで繋いだ萌音から、走り込んだ一尉にパスが出た。
一尉はダイレクトでパスを受け取った。
次の瞬間、背の高い一尉の姿が、宙を飛んだ。
大きくステップを踏んだ一尉は、スリーポイントラインのすぐ内側で地を蹴って、驚くほど高く、遠く飛んだ。
そして私たちが見詰める中、一尉は溜めた力を乗せるように、リングの上からボールを叩きつけた。
NBAそのままのスラムダンク。
男子の試合でもこんなの見たことない。
私たちのプレイを眺めていたギャラリーから、歓声が沸き起こった。