恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
総当たり戦を終えると、私たちは全員で握手を交わして、お互いを称え合って解散した。一尉のプレイに感激した中学生が、盛んにサインをおねだりしていたのがなんとも可愛かった。
その一方で、大学の選手の連れの女どもが、しつこく一尉を合コンに誘おうとしていたのにはウンザリしたけれど。
「ありがとうございました、桧山さん」
私と萌音はそう言って、一尉にお辞儀をした。
「いや、久し振りに楽しませてもらった」
一尉が無邪気に笑う姿なんて、初めてだった。学校の外から追っかけが押し寄せたなんて小桃さんの話も、あのスーパープレイとこの無邪気な笑顔を見ると、当然だと感じてしまう。
一尉は身体に浮いた汗をスポーツタオルで拭いながら、私たちに話しかけた。
「二人とも、高校生としてはかなりのレベルだ。地区大会くらいなら、お前たちを止められる相手はそうはいないだろう」
「でも、チームメイトとぶつかってしまったんです」
私は言った。
「私は一生懸命プレイしていたのに、いい加減にしてって怒鳴られて……」
唇を噛む私を見ながら、桧山一尉は何事か考えを巡らせていたけど、しばらくしてこう言った。
「お前たちのポジションは?」
「私がスモールフォワード、萌音はサブのシューティングガードです」
「なるほど。じゃあ、さくらを詰ったのは、ポイントガードとパワーフォワードの子たちじゃないか」
「なんでわかるんですか?!」
目を丸くしてしまった。美樹はポイントガード、裕子はパワーフォワードがポジションだ。
「まあな」
一尉は小さく微笑と、私たちに向き直った。
「さくら。問題はどちらが悪いかではなく、なぜお前がチームメイトと行き違ってしまったかだ。もし本当にさくらが地区大会を勝ち抜きたいのなら、まずお前からチームメイトに謝らないと、先に進めない」