恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
精肉店で揚げたてのメンチカツを一個づつ買って、ふうふう食べ歩きしながら、私は萌音に話しかけた。
「でもさ、萌音までついてくることなかったでしょ? あんたは私と違って、美樹や裕子たちとも仲悪くないんだから」
私のそんな言葉に、萌音は口の中のメンチカツを飲み込んでから、
「まあね。でも、美樹と裕子はチームメイトだけど、さくらは私の親友だから」
萌音は小学校の頃からの親友で、今は同じバスケ部のチームメイトでもある。
敵を作りやすい私にくらべて、人懐っこい萌音は、誰にでも打ち解けて周りを和ませる、森の小動物みたいな子だった。
大切な私の親友。
でもそんな萌音は、私に付いてバスケ部を休部していた。
「ちょっと練習がキツくって」
萌音はそんな言い訳してたけど、本当は私を心配してくれたんだ。
チームメイトとぶつかって、レギュラーから外された私を心配して、萌音は一緒に部を休んでくれている。
「私のことなら気にしないで」
私の心を読んだように、萌音が言う。
「私は試合に勝つのも負けるのも、さくらと一緒じゃないと納得できなかっただけ」
「萌音……」
「電車が来るよ、さくら」
急ごう、と小走りになる萌音の背中を追うように、私も駅に向けて駆け出した。