恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
「あの、桧山さん」
私は、びっくり箱のバネが飛び出したように、一尉に言った。
「私、こんなにガキです。優さんみたいに綺麗じゃないし、優さんみたいにおしとやかじゃないです」
「……」
「でも──でも、あなたのことが好きなんです、桧山さん。想いがとめられないんです」
一尉は優しい目で、小さく頷いてくれた。
「桧山さん。私、バスケ部に戻って、地区大会頑張ります。それで、もし地区大会に優勝したら──」
私は呼吸を整えて、ありったけの想いを込めて、桧山一尉に、言った。
「私と付き合ってくれますか? 私の恋人になってくれますか? 桧山さん──」
一尉のオフロードは、あの神社の角を曲がって、私の家のすぐ近くまで来て止まった。
一尉はエンジンを止めると、私の目をじっと見詰めて、優しい声で、こう言ってくれた。
「頑張れよ、さくら。応援してる」
私は一尉に抱きついて、声を上げて泣き出してしまった。
「よかったね、さくら──!」
萌音も涙混じりの声で、祝福してくれる。
一尉はぐすぐす泣き続ける私の髪を、静かに指先で梳いて、大きな手のひらで撫でてくれた──。