恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
地区大会が始まった。
私と萌音はベンチメンバーに選ばれたけど、初戦は楽勝ムードもあって、私と萌音に出場のチャンスはなかった。
でも3回戦、4回戦と勝ち進むうち、相手チームとの点差は縮まって、チームはクロスゲームを必死で競り勝った。
私と萌音はじりじりしながら、コーチの声がかかるのを待っていた。
そしてベスト8、ベスト4。
試合は相手チームにリードを許す苦しい展開になった。私と萌音は懸命に、コートで戦う仲間たちに声を出し続けた。
「コートに立ちたいね、さくら……」
「大丈夫だよ萌音、必ずチャンスはくる」
ただの励ましじゃなくて、私には見えていた。接戦の連続でスタートメンバーに疲れが溜まって、攻撃がだんだん単調になって来ていた。
そこを相手チームに突かれていた。
それでも、美樹のスリーポイントシュートや裕子のポスト下の強さで、チームは際どい勝利を重ねてきた。
だけどこのままで済むはずがない。
私は焦れる心を抑えながら、コートの仲間たちの動きを追い続けた。
チームはぎりぎりでベスト4を勝ち上がり、決勝戦への切符を手にした。
私と萌音はまだ呼ばれていない。
でも試合の後、後片付けをしている私と萌音に、コーチが近付いてきた。
「明日は総力戦だ。お前たちも準備しておいてくれ」
私と萌音は、思わず抱き合った。