恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
第2クォーターに入り、敵の動きが激しくなってきた。
攻撃にロングパスを織り込んで、こちらのディフェンスを引き剥がそうとする。
皆んな必死で食らいつくけど、ボールやリバウンドを完全に支配されている。
コーチがタイムアウトを取って、なんとか悪い流れを断ち切ろうとしたけど……。
第2クォーター終了、52ー40。
これ以上離されると辛くなる。
ハーフタイムでベンチに戻ってきた皆んなに、私と萌音はドリンクを手渡しながら、声をかけた。
「大丈夫だよ、まだ行ける!」
皆んな顔を上げて頷いてくれるけど、勢いが戻らない。
するとコーチが、私と萌音に向けて言った。
「鹿田、白川、コートに入れ」
「コーチ……」
「小細工は要らん、存分にかき回せ」
私は萌音と大きく頷きあってから、美樹と裕子のところに駆け寄った。
「美樹、裕子、頑張ろう。後20分、力を出し切って、絶対に優勝しよう」
美樹はじっと私を見詰めていたけど、やがて小さな声で、こう言った。
「お願い、さくら」
そして第3クォーター。
メンバーチェンジがコールされて、遂に私と萌音は、コートに帰ってきた。
私は脚全体でコートの感触を確かめながら、胸の内で想った。
──見ていて、桧山一尉。
美樹からのパスを萌音が繋ぎ、そして敵のディフェンスを十分に引きつけてから、萌音はディフェンスの後ろにワンバウンドパスを突き刺した。
「さくらっ! 行けーっ!!」
私はボールの先に回り込んで、そのままドリブルで風のように、敵のコートに切り込んだ。