恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
突然の縦突破に、敵ディフェンスは遅れた。それでもマンツーマンで一人食い付いてきて、もう一人が身体を張って私のコースを塞ごうとする。
『敵味方の意図と位置を、リアルタイムにイメージできるか』
桧山一尉の言葉をリフレインしながら、私は敵ディフェンスの前で大きく逆ステップを踏んだ。
釣られて反応したディフェンスの、さらに逆にステップして、一瞬空いたスペースにそのまま飛び込んだ。
鮮やかに決まったユーロステップからのレイアップシュート。ベンチもスタンドも一気に盛り上がった。
「次、行くよ!!」
私はボールの行き先を目で追いながら、ひたすら走り続けた。
そして──。
第3クォーター終了、64ー62。
後2点にまで追いついた。
敵もベンチメンバーを全員繰り出す全力勝負。
泣いても笑っても、後10 分。
運命の第4クォーターが始まった。
まず、こちらのマークが甘くなったところを、敵にスリーポイントを決められ、67ー62。
お返しに私と萌音の速攻を立て続けに浴びせて、67ー66。
後1点の展開に、ベンチもスタンドも総立ちになる。
でも敵も冷静に反撃して、69ー66。
味方も負けてない。裕子がジャンプシュートを決めて、69ー68。
逆に今度は、敵にドリブルで持ち込まれ、さらに味方がパスをカットされて、連続失点。73ー68。
味方のパス回しから私が切り込んで、73ー70。
点は入ったけど、味方のスリーポイントが封じられている。
私はわざと動きを半歩遅らせて、敵のパスを誘って一気に飛び出してカット。逆にドリブルで相手コートに持ち込んで、得意のユーロステップで躱して、フックシュートを決めた。
73ー72。残り時間が5分を切った。