恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
敵のポイントガードにスリーポイントを決められた。76ー72。
一瞬目が合った彼女は、私を貫くように睨んだ。
──そう、それなら……。
味方が回してきたパスが、私に通る。
私は敵のポイントガードの脇を突くように、ドリブルで迫った。
敵ディフェンスが私を囲むように集まる。
私はペイントエリア前で大きく踏み切って、ジャンプして──シュートを放つと見せて、バックハンドパスに切り替えた。
ボールはノーマークの美樹へ。ボールを受けた美樹の細い身体が、しなやかに伸びた。
マークを躱した美樹のスリーポイントシュート。76ー75。
敵ベンチがタイムアウトをコールした。
「大丈夫、ひっくり返すよ!」
美樹の声に、全員が「はいっ!」と声を上げた。
残り3分。
敵のリバウンド奪った裕子から美樹へパスが繋がったけど、コースを塞がれて美樹からボールが出ない。
『味方をカバーできなければ、次に墜とされるのは自分だ』
耳の奥に響く、桧山一尉の声。
私は飛ぶように美樹の後ろに回り込み、スクリーンになってくれる美樹からボールを繋ぎ、ディフェンスを引き付けてからその背後にパスを突き刺した。
ドンピシャで飛び込んでくる萌音。ステップを踏んだ萌音から、ボールがリングに向けて放たれた。
76ー77。とうとう私たちは、ゲームをひっくり返した。
残り2分。敵ベンチがたまらずタイムアウトをコールした。