恋のナンバー507〜一尉、私のハートを墜とさないで〜
さくら、さいた
その日、私は萌音と二人で、小桃さんに呼び出された。
「さくらちゃん。気持ちはわかるけど、そんな様子じゃせっかくの美貌が台無しよ」
小桃さんはそう言いながら、私たちをひたちなかの海岸に連れて行った。
塞ぎ込む私を見かねて、萌音と小桃さんが企画してくれたんだろう。
海風を感じながら、海岸でキャンプして、磯釣りして、バーベキューして、焚き火を囲んでお話して……。
汐風に髪を遊ばせているうちに、少しは心も軽くなったかもしれない。
私たちのチームは、県大会のベスト8まで進んで、戦いを終えた。
私もチームも、全て出し切ったから悔いはなかった。でもその代わり、私は空っぽになってしまった。
私を優しく抱きしめてくれた桧山一尉は、もういないから。
涙も出ない。
ただ、虚しい。
人に恋する結末に、こんな滑稽で残酷なエンディングがあるなんて……。
私は西日に染まる水平線を、ぼんやりと眺めていた。
すると突然、小桃さんが口を開いた。
「さくらちゃん。愛しい人はそっちじゃないわよ」
そして私の肩を掴むと、海とは反対の、陸の方向を向かせた。
「どう? そろそろ見えてこない?」
目を凝らすと、西の空の彼方、逆光の中に6つの小さな影が浮かび上がっていた。
「ブルーインパルスよ。聞いたことあるでしょう? 航空自衛隊のアクロバットチーム。埼玉の入間基地の航空祭で演技飛行をして、帰るところなの」
「……」
「で、あの右端の6番機が、桧山一尉だと言ったら?」