あなたが社長だなんて気が付かなかった〜一夜で宿したこの子は私だけのものです〜
翌週改めて産婦人科を受診するとこの前よりも赤ちゃんが大きくなってきていて頭と体が見えてきていた。
相変わらず心臓が動いているのが見える。
「峯岸さん、赤ちゃん元気そうね」
「はい」
「週数から考えても予定日は来年の1月7日ね」
予定日を教えてもらうと実感が湧いてきた。
「母子手帳はもらってきた?」
「はい」
これを手にした時、赤ちゃんを産む責任感をとても感じるとともにママになれる喜びをひしひしと感じた。
家に帰り改めてエコー写真を見ると2週間前とは全く違い、成長の速さを感じた。
つわりで食べられてなくてもこんなに大きくなってくれていて安心した。
友佳にもメッセージを送り順調であると伝えるとすぐに返信が来て喜んでくれていた。
仕事ではさりげなく美香さんがフォローしてくれるおかげでつわりの時期を乗り越え、私は人知れず妊娠を伝えることなく5カ月迎えていた。ローヒールの靴に変え、私服はゆったりとしたものを着ていて誰にも指摘されることはなかった。
真希ちゃんは私より3カ月先に妊娠しておりすでに8カ月。お腹も目立ち、みんなから座ってていいんだよ、と気を遣ってもらえるのを当たり前のようにしていた。もともと立ち回りの上手い子だからそうなるように仕向けているところもある。
「はぁ、真希ちゃんは何しにここにきてるのかしらね」
珍しく美香さんが愚痴っている。
書類を営業に持って行くように伝えただけで妊婦を歩かせるのかと言われたそうだ。
美香さんは出産経験者、無理なことは言わないはず。それなのに真希ちゃんはみんなに酷いことを言われたと言い回ってる。
「書類整理もしてくれず、届けてもくれない。電話に出るけどその後の処理は他の人にさせる。なんだかなぁ。私が間違ってるのかな」
「そんなことないですよ。動ける時には動かないと。遊びに来てるんじゃないんですから。体調が悪いなら休むべきですしね」
つわりを乗り越えた私は美香さんのフォローもあるけれどある程度今までと同じ業務をこなしていた。
「でもああやってみんなに言いふらされるともう仕事を振れないわ」
「うーん、そうですね。私が届けてきますよ。営業ですよね?」
「そう? 営業の加藤さんに差し戻してきて欲しいの。それとついでに秘書課でこれも置いてきてくれないかしら」
「わかりました。回ってきますね」
「ありがとう」
美香さんから書類を受け取ると総務を出て8階の営業へ向かった。
エレベーターに乗ったらすぐなのにどうして行けないのかわからない。
そんなことを愚痴っても始まらないし、何か言うと美香さんのように周囲に影口を叩かれてしまうので言えない。
やっと真希ちゃんに絡まれることが少なくなってきたところだからそっとしておこう。
「すみません、加藤さんにお渡ししたいものがあるのですが」
近くにいた事務の女性に聞くが不在と言われ書類を託した。
またエレベーターに乗ると今度は12階の役員フロアへ移動した。
エレベーターを降りたところから廊下のカーペットが違いふかふかしている。
私は秘書室へ向かおうと歩き出すが足元を取られ転びそうになった。
あ……!
お腹を庇おうと私は手をつけず腰をぶつけ、足を少し捻ってしまった。
「おい、大丈夫か?」
後ろから声が聞こえてきたので思わず「赤ちゃんが……」と言ってしまった。
すると男性は慌てて私を抱き起こし、部屋へ連れて行ってソファに座らせてくれた。
「お腹は痛くないか? ぶつけてはいないか?」
「はい。腰と、足を少し捻ったみたいですが大丈夫そうです」
お腹に手を当てたまま確認するが元気かどうかはわからない。
お腹を見つめたままお腹をさすっていると声の主に病院に行こう、と言われ驚いた。
「だ、大丈夫です。ひとりで行けますから」
慌ててそう言うと立ちあがろうとするが足を捻ったため力が入らずフラッとしてしまった。
男性はすかさず私を支え、またソファに座らせた。
「君は何課だ? 名前は? ちょっと待っていなさい」
男性は私の元を離れて行った。
ふと見上げるとここは見たことのない部屋だった。
「ここ……どこ?」
私が周りを見回しているとすぐに男性ふたりが戻ってきた。
「車の準備ができた。君の荷物も総務の子が下まで持ってきてくれるから行くぞ」
先ほどの男性は私のことを抱き上げるとエレベーターに乗せられエントランスへと歩き出した。
「だ、大丈夫ですから」
「そう言ってさっきはよろけただろう。無理するな、雪」
え?!
私はようやく顔を上げるとそこには見覚えのある顔があった。
「あ、あ、あ……」
私の声にならない声に彼は奥歯を噛み締めたような笑いを堪えた顔になっている。
「黙って」
彼はエントランスに横付けされた車に私を座らせた。
するとすぐに美香さんが荷物を持って走り込んできた。
「雪ちゃん、大丈夫? ごめんね、私が頼んだばかりに」
「美香さん、私がよろけたせいです。動いたからこうなったわけではないんです」
美香さんの顔は青ざめている。
本当に美香さんのせいではない。
毎日電車で通勤していることに比べたらエレベーターで移動するくらい楽なものだ。
でも先ほど真希ちゃんの話をした後だったせいか美香さんは焦っていた。
「美香さん、本当に大丈夫ですから。念のため診てもらうだけですから。また連絡しますね」
私がそう言うと彼はドアを閉め、反対側に乗り込んできた。
どういうこと?
一緒に行くつもり?
彼は誰なの?
相変わらず心臓が動いているのが見える。
「峯岸さん、赤ちゃん元気そうね」
「はい」
「週数から考えても予定日は来年の1月7日ね」
予定日を教えてもらうと実感が湧いてきた。
「母子手帳はもらってきた?」
「はい」
これを手にした時、赤ちゃんを産む責任感をとても感じるとともにママになれる喜びをひしひしと感じた。
家に帰り改めてエコー写真を見ると2週間前とは全く違い、成長の速さを感じた。
つわりで食べられてなくてもこんなに大きくなってくれていて安心した。
友佳にもメッセージを送り順調であると伝えるとすぐに返信が来て喜んでくれていた。
仕事ではさりげなく美香さんがフォローしてくれるおかげでつわりの時期を乗り越え、私は人知れず妊娠を伝えることなく5カ月迎えていた。ローヒールの靴に変え、私服はゆったりとしたものを着ていて誰にも指摘されることはなかった。
真希ちゃんは私より3カ月先に妊娠しておりすでに8カ月。お腹も目立ち、みんなから座ってていいんだよ、と気を遣ってもらえるのを当たり前のようにしていた。もともと立ち回りの上手い子だからそうなるように仕向けているところもある。
「はぁ、真希ちゃんは何しにここにきてるのかしらね」
珍しく美香さんが愚痴っている。
書類を営業に持って行くように伝えただけで妊婦を歩かせるのかと言われたそうだ。
美香さんは出産経験者、無理なことは言わないはず。それなのに真希ちゃんはみんなに酷いことを言われたと言い回ってる。
「書類整理もしてくれず、届けてもくれない。電話に出るけどその後の処理は他の人にさせる。なんだかなぁ。私が間違ってるのかな」
「そんなことないですよ。動ける時には動かないと。遊びに来てるんじゃないんですから。体調が悪いなら休むべきですしね」
つわりを乗り越えた私は美香さんのフォローもあるけれどある程度今までと同じ業務をこなしていた。
「でもああやってみんなに言いふらされるともう仕事を振れないわ」
「うーん、そうですね。私が届けてきますよ。営業ですよね?」
「そう? 営業の加藤さんに差し戻してきて欲しいの。それとついでに秘書課でこれも置いてきてくれないかしら」
「わかりました。回ってきますね」
「ありがとう」
美香さんから書類を受け取ると総務を出て8階の営業へ向かった。
エレベーターに乗ったらすぐなのにどうして行けないのかわからない。
そんなことを愚痴っても始まらないし、何か言うと美香さんのように周囲に影口を叩かれてしまうので言えない。
やっと真希ちゃんに絡まれることが少なくなってきたところだからそっとしておこう。
「すみません、加藤さんにお渡ししたいものがあるのですが」
近くにいた事務の女性に聞くが不在と言われ書類を託した。
またエレベーターに乗ると今度は12階の役員フロアへ移動した。
エレベーターを降りたところから廊下のカーペットが違いふかふかしている。
私は秘書室へ向かおうと歩き出すが足元を取られ転びそうになった。
あ……!
お腹を庇おうと私は手をつけず腰をぶつけ、足を少し捻ってしまった。
「おい、大丈夫か?」
後ろから声が聞こえてきたので思わず「赤ちゃんが……」と言ってしまった。
すると男性は慌てて私を抱き起こし、部屋へ連れて行ってソファに座らせてくれた。
「お腹は痛くないか? ぶつけてはいないか?」
「はい。腰と、足を少し捻ったみたいですが大丈夫そうです」
お腹に手を当てたまま確認するが元気かどうかはわからない。
お腹を見つめたままお腹をさすっていると声の主に病院に行こう、と言われ驚いた。
「だ、大丈夫です。ひとりで行けますから」
慌ててそう言うと立ちあがろうとするが足を捻ったため力が入らずフラッとしてしまった。
男性はすかさず私を支え、またソファに座らせた。
「君は何課だ? 名前は? ちょっと待っていなさい」
男性は私の元を離れて行った。
ふと見上げるとここは見たことのない部屋だった。
「ここ……どこ?」
私が周りを見回しているとすぐに男性ふたりが戻ってきた。
「車の準備ができた。君の荷物も総務の子が下まで持ってきてくれるから行くぞ」
先ほどの男性は私のことを抱き上げるとエレベーターに乗せられエントランスへと歩き出した。
「だ、大丈夫ですから」
「そう言ってさっきはよろけただろう。無理するな、雪」
え?!
私はようやく顔を上げるとそこには見覚えのある顔があった。
「あ、あ、あ……」
私の声にならない声に彼は奥歯を噛み締めたような笑いを堪えた顔になっている。
「黙って」
彼はエントランスに横付けされた車に私を座らせた。
するとすぐに美香さんが荷物を持って走り込んできた。
「雪ちゃん、大丈夫? ごめんね、私が頼んだばかりに」
「美香さん、私がよろけたせいです。動いたからこうなったわけではないんです」
美香さんの顔は青ざめている。
本当に美香さんのせいではない。
毎日電車で通勤していることに比べたらエレベーターで移動するくらい楽なものだ。
でも先ほど真希ちゃんの話をした後だったせいか美香さんは焦っていた。
「美香さん、本当に大丈夫ですから。念のため診てもらうだけですから。また連絡しますね」
私がそう言うと彼はドアを閉め、反対側に乗り込んできた。
どういうこと?
一緒に行くつもり?
彼は誰なの?