あなたが社長だなんて気が付かなかった〜一夜で宿したこの子は私だけのものです〜

「そろそろ涼しくなってきたかな」

私を誘い浜辺へ歩き始めた。
また腰を支えながら歩く。

「足だけ入らない？」

そういうと礼央さんはサンダルを脱いだ。
肩に掴まるように言われ、礼央さんは私のサンダルも脱がせてくれた。

うわぁ、いいな。
そんな声がどこからか聞こえてきた。

サンダルを脱ぐと今度は手を繋いで海の中へ足をすすめた。
砂の中に足が沈む感覚を楽しみながら歩くと波がかかり気持ちいい。
礼央さんに手を引かれ海辺を歩くと気持ちも明るくなる。

パシャリ

あ……。
視線を上げると礼央さんがスマホで自撮りしていた。

「雪、可愛く撮れてる」

私と手を繋いでいる2人の姿がよく撮れている。
恥ずかしくなるがふたりの写真があまりにきれいに撮れていたので嬉しい。

「あんまり足をつけていると体を冷やすよな。そろそろ行こうか」

また手を引かれ浜辺へ戻るとさっと礼央さんはハンカチを出すと軽く水気を拭き取りサンダルを履かせてくれた。
周りの視線が集まるのを感じる。

「桟橋に行って帰ろうか」

また腰に手を回すと桟橋へと移動する。
17時を過ぎ人もまばらになってきた。
夕焼けを見ていると近くにいたカップルが写真を撮って欲しいと声をかけてきた。
礼央さんは私の腰から手を離すと快くスマホを受け取り、ふたりの写真を撮ってあげた。
すると交代にとって欲しいとお願いをし始めた。

「さ、雪。こっちで撮ってもらおう」

また私の方に戻ってくると彼に手を引かれ海をバックに立つと腰に手を回し、抱き寄せられた。
私は驚いて彼を見上げるとパシャリと音が聞こえた。
その音に反応して今度は正面を見るとまたパシャリと音がした。

「ありがとうございます」

礼央さんはスマホを受け取ると写真の確認をする。

「おふたり、モデルみたいですね。写真の撮られ方がすごく素敵でしたよ」

1枚目は夕陽と海を背景に私たちは寄り添い、見つめあっていた。
2枚目は私は正面を見ているが礼央さんは抱き寄せたまま私の頭にキスをしていた。

全然思っていた写真と違う。
写っているのが自分だと思えないくらいに素敵すぎる。

礼央さんは写真を私のスマホへ転送してくれた。
そのまま礼央さんは恥ずかしいことにあろうかとか待ち受けにしてしまった。
いくらダメだと言っても聞き入れてくれずポケットにしまってしまった。

夕飯をシーフード料理のお店で堪能するとまた高速を走り家に送り届けてくれた。
部屋の前まで付き添ってくれて何から何まで完璧なエスコートだった。

「雪、楽しかったよ。ありがとう」

彼はそれだけ言うとすぐに車へ戻って行ってしまった。