あなたが社長だなんて気が付かなかった〜一夜で宿したこの子は私だけのものです〜

出会えてよかった

秋になり妊娠8ヵ月となった。
真希ちゃんはひと足先に出産し、みんなに感謝のメッセージが届いた。

そして私には個人的にメッセージが届いた。

【雪先輩、今まで本当にすみませんでした。彼も奪ってしまったこと、今考えるとなんで酷いことをしてしまったのかと反省しています。みんなに好かれる先輩が羨ましかった。これからは働くママ同士、よろしくお願いします。出産はとても大変ですが生まれてきてくれた我が子は何ものにも替え難い大切な存在です。この子が私に力をくれ、こうして先輩にメッセージを送る勇気がでました。先輩にもすぐにそんな存在ができますね。出産頑張ってください】

今までの真希ちゃんからは想像がつかないようなメッセージに驚かされた。
あざといと言われていた彼女をこんなにも変えてしまう赤ちゃんの存在。
ますます出産が楽しみになってきたがひとりで産む怖さもある。

ようやく先日金沢の両親には子供の存在を伝えたところだ。
両親には驚かれたがすでに8ヵ月に入っているためそれ以上のことは言われなかった。
ただ、父親は誰なのかと問い詰められた。
言えるはずがない。
私は泣きながら「言えない」と伝えると母は
「わかったわ」と一言だけ言うとその後は何も聞かずにいてくれた。
里帰り出産をするように言われとても悩んでいる。
自分ひとりでは何かあった時のことを考えると不安でならない。
友佳は手伝ってくれると言ってくれているが仕事もあるから頼ってもいられない。
自分で産み育てると決めた限りはやり通したい気持ちもある。
でも不安は拭いきれない。
どうしたらいいのか毎日悩んでいた。

産科の検診で休みをもらい赤ちゃんを診てもらうと画面におさまりきれないほどに大きくなっていた。
指しゃぶりをしている姿に目が釘付けになった。エコーの写真を撮ってもらうと私は大切にバッグにしまった。
せっかくの休みなので出産準備をするため買い物へ出かけた。
肌着やガーゼ、哺乳瓶などいくつも選ぶとついついおもちゃにも目がいってしまう。
あと2カ月したらお腹から出てきちゃうんだね。お腹をさするとぽこぽこと私を蹴ってくる。
最近夜も起こされるくらい元気に動き回る。
今日は検診の後買い物に出てしまったため少し疲れてしまった。
私は荷物を持つと近くのカフェに立ち寄りやっと座った。
店員さんが膝掛けを持ってくれ、その心遣いがありがたい。
世の中妊娠している人に優しい社会で嬉しくなる。
ココアとブラマンジェを頼むとようやく一息つかことができた。
スマホを見るとメッセージが届いていた。
礼央さんからで、検診はどうだったかと確認するものだった。

【順調でしたよ。指しゃぶりをしていてとても可愛かったです】

メッセージと共にエコー写真をスマホで撮影し添付してあげた。
お腹が大きくなるにつれ礼央さんからのメッセージは頻回になってきた。
日に何度も体調の確認をしたり、赤ちゃんのことを聞いてくる。
忙しい合間をぬっては時折うちに差し入れを届けてくれ、食事を作ってくれることもある。
礼央さんとはあれからいい関係を続けていると思う。特に進むこともなく穏やかな関係。

【今どこにいる?】

折り返しのメッセージに驚き私は今いる場所を教えるとそのまま返信が来なくなった。
何だったんだろう。

私はお茶の時間を楽しむと重い腰をあげ、荷物を持ちお会計へと進んだ。

店の外に出ると礼央さんが目の前に立っていて驚いた。
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