あなたが社長だなんて気が付かなかった〜一夜で宿したこの子は私だけのものです〜
「よかった、間に合った!」
この陽気にはにつかわない、おでこに汗をかき息を上げている礼央さんはスーツを着ているが少し乱れている。
「どうしたんですか?」
「いや、今日雪に合わせて休みを取ってたんだが急に呼び出されたんだ。だから終わらせて走ってきた」
私はバッグの中からハンカチを出すと彼の汗を背伸びして拭いてあげた。
「ありがとう」
そう言うと私からハンカチを受け取り、首元の朝を自分で拭き始めた。
「この後付き合ってくれないか?」
「はい。いいですけど」
私の返事を聞くと買い物袋をさりげなく私の手から取り上げる。空いた手をすかさず自分の手で塞いだ。
「どこに行くんですか?」
「車で移動するが遠くはないよ」
彼は私の手を引くとタクシーを捕まえ、行き先を伝えた。
「シャーロットホテル?」
「あぁ」
シャーロットホテルといえばあの時のホテル。
何をしにあそこに行くの?
礼央さんはタクシーに乗ってから何も喋らない。
ただ、私の手を握りしめたまま。
ホテルに到着するとフロントで声をかけている間私はロビーで座っていた。
検診に行くだけのつもりだったので普段着の私はこの格式高いホテルに来て居心地が悪い。
礼央さんがこちらに歩いてきた。
「礼央さん。私こんな格好なので帰ります」
ソファに置かれた買い物袋を持つと立ち上がった。
「待ってくれ」
私の手から買い物袋を取り上げると手を引きエレベーターへと連れていかれる。
「ごめん、強引なことをした。でも帰らないでくれ」
強く握られた手はどことなく震えているように思えた。
私は23階に到着するとそのまま彼の手に引かれ部屋の前まで来た。
あれ?
この部屋に覚えがある。
もしかしてあの時の部屋?
カードキーを差し込むとカチャリとロックが解除された。
ドアを開けると中に入るよう促される。
私は足を踏み入れるとあの日と同じ部屋だったことが朧げだが思い出された。
ドアから入ると正面には電波塔のタワーが大きく見える。
秋の日暮れは早く、もう夕焼け空になっていた。
応接セットがあるところを見ると普通の部屋とは違うことがわかる。
あの時にはそこまで考える余裕はなかった。
逃げ帰るようにした覚えしかない。
礼央さんは私の荷物をチェストの上に置くと急に目の前で跪いた。
私の両手を礼央さんの両手に繋がれた。
「雪。俺と結婚してください」
「え?」
「俺が雪と赤ん坊を必ず幸せにする。俺も2人と一緒に幸せになりたい。誰の子供でも構わない。俺の子供として一緒に育てさせてほしい」
跪き見上げてくる礼央さんの表情は固く、今まで見たことがないほど真剣な表情だった。
「礼央さん本気?」
「もちろんだ」
即答する彼から私は目が離せない。
「雪のことを忘れられなかった。その雪が目の前に現れてから俺の毎日は雪でいっぱいだ。仕事で忙しくても雪とやり取りをするだけでとても癒された。結婚したいと思える人も、俺の手で幸せにしたい思える人も雪以外にはいない。俺が守りたい。結婚してください」
私はあまりの出来事に手が震え、足もガタガタしてきた。
涙が流れてくるが礼央さんに繋がれた手で私は拭くことができない。
「礼央さんは私でいいの?」
「雪がいいんだ!」
「うん……私も礼央さんがいい!」
それを聞いた礼央さんは私のことを強く強く抱きしめてきた。
「雪」
名前を呼ぶ声が聞こえた瞬間には私の唇は彼に奪われていた。
焦るように私の唇を貪る。
私も彼に求められることが嬉しくてしがみつくようにキスに応じる。
「あぁ、やっと俺の胸に収まった。雪、愛してる」
彼の切ない声に私の胸は熱くなる。
「礼央さん……」
「雪がさっき帰るというから焦った。もうダメだと思った。だから順番がめちゃくちゃだがこれを受け取ってもらえるか?」
彼はポケットから小箱を取り出すと私の前に差し出してきた。
「雪にはめてもらいたくて選んだ」
小箱の中には輝くダイヤがついたリングが鎮座していた。リングにいくつもの小さなダイヤが散りばめられておりあまりの華やかさに手が出ない。
すると礼央さんはリングを取り出し私の左手を取ると顔を見ながら確認する。
「はめてもらえますか?」
再び涙が目元にじわりと浮かんできた。
私は手の甲で涙を拭うと頷いた。
「はい」
すると礼央さんは私の指に差し入れてきた。
涙が止まらない私の目元に礼央さんは唇を当てると涙を吸い取ってくれる。
「雪、幸せになろう」
「はい。私もあなたに伝えたいことがあるんです」
私は左手でお腹を撫でながら右手で礼央さんの手をお腹に持ってきた。
「この子は礼央さんの子供です。あの日、あなたからもらった大切な命です。私にはこの子を堕ろす選択肢はなかった。あの日のあなたに感謝して、あの3時間だけでもあなたの子供を育てたいと思うほどに惹かれていました」
「俺の子供? 本当か? 雪だけの子だと言われた時にもしかしたらとは思っていたが。ああ、こんなに嬉しいことがあるなんて。ありがとう」
礼央さんはお腹を優しく撫でると私の顔を見てまた言ってくれた。
「俺の子供を宿してくれてありがとう」
また私を抱きしめるとソファに座らせてくれた。
何度も何度も礼央さんにキスをされ私の胸はいっぱいになった。
「雪、本当はまず誕生日をしたかったんだ。一昨日が誕生日だろう?そのプレゼントがこっち」
彼はチェストの上に置いてあった紙袋から取り出してきたものがあった。
これは四角い箱で何が入っているのかわからない。
箱を開け取り出した彼は私の手を取るとつけてくれた。
それは腕時計だった。
「本当はブレスレットにしたかったがこれから子供が生まれる雪にはなかなか使ってもらえないだろう? だから俺が繋ぎ止める手錠代わりの腕時計だ。お揃いだって言ったら……気持ち悪いか?」
私とお揃いのシルバーの腕時計が彼の腕に巻かれていた。
まさかこんなことを彼がするなんて想像出来ない。
彼は時々こうして可愛いことをする。そしてそれを恥ずかしがる表情に私はキュンとしてしまう。
「お揃いなんて嬉しい!」
私の言葉を聞いてホッとした様子の彼は大きく息を吐き出した。
「良かった。何もかも良かった……少し前から心配だったんだ。また雪に拒絶されたらと思うと不安で。情けないな」
頭をかく彼の仕草でさえキュンとする。
今日の私は幸せが溢れ出て胸が締め付けられてしまいうまく表現できない。
思わず抱きつくと彼の首に手を回すと私からキスをした。
「礼央さん、私も愛してる!」
抱きつかれ意表をつかれた彼だが私をしっかりと受け止めてくれた。
あの日とは違い私たちは始まりのこの部屋でくっついてこれでもかというくらい甘い夜を過ごした。
お腹に赤ちゃんがいるのに私は甘えん坊のように礼央さんに密着していた。
彼もずっとそばで甘やかしてくれた。
あと2ヵ月もしないで親になってしまう。
それまでの時間を大切にしたくて今まで我慢していたタガが外れてしまったかのように今までしたこともないくらいにピッタリとくっついて過ごした。
この陽気にはにつかわない、おでこに汗をかき息を上げている礼央さんはスーツを着ているが少し乱れている。
「どうしたんですか?」
「いや、今日雪に合わせて休みを取ってたんだが急に呼び出されたんだ。だから終わらせて走ってきた」
私はバッグの中からハンカチを出すと彼の汗を背伸びして拭いてあげた。
「ありがとう」
そう言うと私からハンカチを受け取り、首元の朝を自分で拭き始めた。
「この後付き合ってくれないか?」
「はい。いいですけど」
私の返事を聞くと買い物袋をさりげなく私の手から取り上げる。空いた手をすかさず自分の手で塞いだ。
「どこに行くんですか?」
「車で移動するが遠くはないよ」
彼は私の手を引くとタクシーを捕まえ、行き先を伝えた。
「シャーロットホテル?」
「あぁ」
シャーロットホテルといえばあの時のホテル。
何をしにあそこに行くの?
礼央さんはタクシーに乗ってから何も喋らない。
ただ、私の手を握りしめたまま。
ホテルに到着するとフロントで声をかけている間私はロビーで座っていた。
検診に行くだけのつもりだったので普段着の私はこの格式高いホテルに来て居心地が悪い。
礼央さんがこちらに歩いてきた。
「礼央さん。私こんな格好なので帰ります」
ソファに置かれた買い物袋を持つと立ち上がった。
「待ってくれ」
私の手から買い物袋を取り上げると手を引きエレベーターへと連れていかれる。
「ごめん、強引なことをした。でも帰らないでくれ」
強く握られた手はどことなく震えているように思えた。
私は23階に到着するとそのまま彼の手に引かれ部屋の前まで来た。
あれ?
この部屋に覚えがある。
もしかしてあの時の部屋?
カードキーを差し込むとカチャリとロックが解除された。
ドアを開けると中に入るよう促される。
私は足を踏み入れるとあの日と同じ部屋だったことが朧げだが思い出された。
ドアから入ると正面には電波塔のタワーが大きく見える。
秋の日暮れは早く、もう夕焼け空になっていた。
応接セットがあるところを見ると普通の部屋とは違うことがわかる。
あの時にはそこまで考える余裕はなかった。
逃げ帰るようにした覚えしかない。
礼央さんは私の荷物をチェストの上に置くと急に目の前で跪いた。
私の両手を礼央さんの両手に繋がれた。
「雪。俺と結婚してください」
「え?」
「俺が雪と赤ん坊を必ず幸せにする。俺も2人と一緒に幸せになりたい。誰の子供でも構わない。俺の子供として一緒に育てさせてほしい」
跪き見上げてくる礼央さんの表情は固く、今まで見たことがないほど真剣な表情だった。
「礼央さん本気?」
「もちろんだ」
即答する彼から私は目が離せない。
「雪のことを忘れられなかった。その雪が目の前に現れてから俺の毎日は雪でいっぱいだ。仕事で忙しくても雪とやり取りをするだけでとても癒された。結婚したいと思える人も、俺の手で幸せにしたい思える人も雪以外にはいない。俺が守りたい。結婚してください」
私はあまりの出来事に手が震え、足もガタガタしてきた。
涙が流れてくるが礼央さんに繋がれた手で私は拭くことができない。
「礼央さんは私でいいの?」
「雪がいいんだ!」
「うん……私も礼央さんがいい!」
それを聞いた礼央さんは私のことを強く強く抱きしめてきた。
「雪」
名前を呼ぶ声が聞こえた瞬間には私の唇は彼に奪われていた。
焦るように私の唇を貪る。
私も彼に求められることが嬉しくてしがみつくようにキスに応じる。
「あぁ、やっと俺の胸に収まった。雪、愛してる」
彼の切ない声に私の胸は熱くなる。
「礼央さん……」
「雪がさっき帰るというから焦った。もうダメだと思った。だから順番がめちゃくちゃだがこれを受け取ってもらえるか?」
彼はポケットから小箱を取り出すと私の前に差し出してきた。
「雪にはめてもらいたくて選んだ」
小箱の中には輝くダイヤがついたリングが鎮座していた。リングにいくつもの小さなダイヤが散りばめられておりあまりの華やかさに手が出ない。
すると礼央さんはリングを取り出し私の左手を取ると顔を見ながら確認する。
「はめてもらえますか?」
再び涙が目元にじわりと浮かんできた。
私は手の甲で涙を拭うと頷いた。
「はい」
すると礼央さんは私の指に差し入れてきた。
涙が止まらない私の目元に礼央さんは唇を当てると涙を吸い取ってくれる。
「雪、幸せになろう」
「はい。私もあなたに伝えたいことがあるんです」
私は左手でお腹を撫でながら右手で礼央さんの手をお腹に持ってきた。
「この子は礼央さんの子供です。あの日、あなたからもらった大切な命です。私にはこの子を堕ろす選択肢はなかった。あの日のあなたに感謝して、あの3時間だけでもあなたの子供を育てたいと思うほどに惹かれていました」
「俺の子供? 本当か? 雪だけの子だと言われた時にもしかしたらとは思っていたが。ああ、こんなに嬉しいことがあるなんて。ありがとう」
礼央さんはお腹を優しく撫でると私の顔を見てまた言ってくれた。
「俺の子供を宿してくれてありがとう」
また私を抱きしめるとソファに座らせてくれた。
何度も何度も礼央さんにキスをされ私の胸はいっぱいになった。
「雪、本当はまず誕生日をしたかったんだ。一昨日が誕生日だろう?そのプレゼントがこっち」
彼はチェストの上に置いてあった紙袋から取り出してきたものがあった。
これは四角い箱で何が入っているのかわからない。
箱を開け取り出した彼は私の手を取るとつけてくれた。
それは腕時計だった。
「本当はブレスレットにしたかったがこれから子供が生まれる雪にはなかなか使ってもらえないだろう? だから俺が繋ぎ止める手錠代わりの腕時計だ。お揃いだって言ったら……気持ち悪いか?」
私とお揃いのシルバーの腕時計が彼の腕に巻かれていた。
まさかこんなことを彼がするなんて想像出来ない。
彼は時々こうして可愛いことをする。そしてそれを恥ずかしがる表情に私はキュンとしてしまう。
「お揃いなんて嬉しい!」
私の言葉を聞いてホッとした様子の彼は大きく息を吐き出した。
「良かった。何もかも良かった……少し前から心配だったんだ。また雪に拒絶されたらと思うと不安で。情けないな」
頭をかく彼の仕草でさえキュンとする。
今日の私は幸せが溢れ出て胸が締め付けられてしまいうまく表現できない。
思わず抱きつくと彼の首に手を回すと私からキスをした。
「礼央さん、私も愛してる!」
抱きつかれ意表をつかれた彼だが私をしっかりと受け止めてくれた。
あの日とは違い私たちは始まりのこの部屋でくっついてこれでもかというくらい甘い夜を過ごした。
お腹に赤ちゃんがいるのに私は甘えん坊のように礼央さんに密着していた。
彼もずっとそばで甘やかしてくれた。
あと2ヵ月もしないで親になってしまう。
それまでの時間を大切にしたくて今まで我慢していたタガが外れてしまったかのように今までしたこともないくらいにピッタリとくっついて過ごした。