夏樹先輩、好きでした。


──真っ青な空に、飛行機が白線を描いていく。


あの飛行機雲、先輩の教室からも見えているのかな?

窓際の自分の席から、外の空を見つめながら先輩のことを考える。


先輩を見かけることはあっても、話したりはできないまま1ヶ月が経ち、5月に突入した。


キーンコーン……


「椎菜! 私、購買に行ってくる」

「行ってらっしゃい〜!」


昼休み。購買部に行けば、あのときみたいに久遠先輩に会えるかもしれない。


その一心で、私は週に何度か購買部に行き、昼食に食べるパンを買うようになっていた。


「あら、花梨ちゃん。こんにちは」

購買部に行く回数が増え、私は販売のおばさんとも顔見知りになった。


「いつものクリームパン、今日は沢山あるわよ〜!」

「わぁ、ありがとうございます! それじゃあ、クリームパンと玉子サンドをください」


おばさんに買うものを伝え、私は財布を開く。が、財布の中を見た途端、私は固まってしまった。


うそ。お札が1枚もない。お金は小銭のみで、たったの26円しかない。


ここ最近は家から持参のお弁当ではなく、購買でパンを買うことが増えていたからかな?


お小遣いの減りが今までよりも早くて、いま所持金がピンチなのをすっかり忘れていた。


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