夏樹先輩、好きでした。
「……花梨ちゃん?」
おばさんは、すでに紙袋にパンを入れてくれたらしく、私のお会計を待っている。
今更、買うのをやめるだなんて。
だけど、26円しかなかったらパンは買えないし。今日は諦めるしか……。
「あの、おばさん。申し訳ないんですけど……」
「……ねぇ。これ、そこに落ちてたよ?」
横から500円玉がひとつ、お会計用の黒のトレイに置かれた。
「大事なお金を落とすだなんて。キミはダメな子だなぁ」
うそ、この声は……。
「くっ、久遠先輩!!」
私の隣には、いつの間にか久遠先輩が立っていた。