夏樹先輩、好きでした。
私は、徐々に遠ざかっていく先輩の背中を見つめる。
もしかして私、先輩に名前覚えてもらえたりしたのかな? そうだと、良いなぁ。
初めて『またね』って、言ってくれたし。
何気ない言葉でも先輩から言われると、他の人に言われる何倍も嬉しい。
先ほどの先輩の優しい笑顔を思いだし、パンの入った紙袋を持つ手に力がこもる。
今日、パンを奢ってもらったから。
今度、先輩に何かお礼をしよう。
そういえば先輩、7月が誕生日だって人伝に聞いたなぁ。
『夏樹』って名前だから、夏生まれなんだよね。
今回のお礼も兼ねて、先輩に誕生日プレゼントを渡そうかな?
でも、渡すとしたら何が良いだろう。
先輩はバスケ部だから、スポーツタオルとか? それとも……。
こういうことって、頭の中で考えているだけでも楽しい。
あとで、椎菜にも相談してみようかな。
そんなことを思いながら、私も自分の教室へと向かった。