夏樹先輩、好きでした。
憧れていた久遠先輩に、まさか本当に自分の名前を覚えてもらえていたなんて。その上、おはようの挨拶までしてもらって。
しかも、久遠先輩のことを『夏樹先輩』って下の名前で呼ぶことになっただなんて。
信じられない。急展開過ぎて、頭がついていけてない。
ーー「……花梨?」
もしかして、これは夢ですか?
「ねぇ、花梨ってば!!」
……はっ!
「どうしたの? ボーッとしちゃって。もうすぐ1限目の授業始まるよ?」
後ろから椎菜に肩を叩かれ我に返った私は、いつの間にか教室の自分の席に座っていた。
どうやら、私はあれからずっと上の空だったようだ。
って、ヤバい! さっき先輩に、学校頑張ろうなって言われたところなのに。
ボーッとしていたらダメだ。
私は慌てて、スクールバッグの中から教科書を出した。