夏樹先輩、好きでした。


夏樹先輩が今朝、『今日もお互い頑張ろうな』って、言ってくれたから。


この日は、いつも以上に頑張れた。


苦手な数学の授業も。


体育の持久走も。


英語の小テストも。


教室は違えど、先輩もきっと今同じように頑張って授業を受けているはずだからって。


そう思って、先輩のあの優しい笑顔を思い浮かべたら、不思議と頑張れた。


恋の力って、好きな人の言葉ってすごいなぁ。



***



「あっ、花梨ちゃん!」


夏樹先輩は、校内で私を見かけるといつも声をかけてくれるようになっていた。


先輩と会って、話すたびに。

放課後、一生懸命バスケを頑張る先輩の姿を見るたびに。

私はどんどん、先輩に惹かれていった。


「こんにちは、夏樹先輩」

「こんにちは。今日も暑いね」

「ほんと、暑いですね」


6月半ば。梅雨入りしてからは、ぐずついた天気と蒸し暑さが続いていて、気が滅入る毎日だけど。


こうして学校で夏樹先輩に会えると、私の心は一気に晴れる。


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