夏樹先輩、好きでした。
しかし、先輩を見ていて心が爽やかになっても、残念ながら夏の暑さにはかなわず。
「暑すぎる」
あまりの蒸し暑さに、私が片手で顔を煽いでいると。
「花梨ちゃんって、髪きれいだよね」
「えっ!」
先輩、今さらっと褒めてくれた!?
「シャンプーのCMとか出れちゃいそうなくらい、めっちゃきれい」
「あっ、ありがとうございます」
うわぁ。好きな人に自分のことを褒めてもらえるなんて、天にも昇る気持ちだ。
「花梨ちゃん、いつも髪下ろしてるけどさ。髪、結んだりはしないの?」
「髪……ですか?」
先輩のほうを見上げると、目が合い胸が跳ねた。
「下ろしてるのも良いけど。一度、キミが髪結んでるところも見てみたいなと思って。
そうだなぁ……ポニーテールとか?」
「おーい。夏樹! 購買早く行かないと、売り切れるぞ」
「ああ。今行く。俺、クリームパン食いてぇもん」
「それじゃあ」と、先輩は私に手を振ると、前にいる友達のところへと走って行った。
どうしよう。夏樹先輩に、髪結んでるところが見たいと言われてしまった。
先輩、もしかしてポニーテールの女の子が好きなのかな?
いつも髪は基本下ろしたままで、ヘアアレンジとかしていなかったけど。
大好きな先輩に言われたら……これはもう、ポニーテールにするしかないじゃない。