夏樹先輩、好きでした。


「おはよう、花梨。あれ? 今日はポニーテール? 珍しいね」

学校の昇降口のところで偶然、椎菜と会った。


「おはよう、椎菜。うん、最近暑いからさ」


ふぅ。家から全速力で走ってきたから、なんとか遅刻せずに済んだけど……止まった瞬間、汗がどんどん出てきて止まらない。


私は、流れる汗をハンカチでおさえる。


これだから、夏は嫌だ。


って、夏は先輩の生まれた季節だった。
嫌とか言ってごめんなさい。


心の中でひとり、謝っていると。


「あっ、花梨ちゃん」


私の耳がピクンと反応する。まさか、この声は……。


椎菜と一緒に、下駄箱から階段へと向かう廊下で、反対方向から歩いてきた夏樹先輩に声をかけられた。


うそ。私、まだ汗が止まっていないのに。鏡で身だしなみもチェックできていないのに。


こんなときに、先輩に会っちゃうなんて。

学年が違うから、会えないときは何日も会えないのに。


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