夏樹先輩、好きでした。


『久遠先輩とエリカ先輩は、中学3年の頃から付き合っている』


先輩と同じ中学だった椎菜の言葉に、私は頭をガツンと金槌で殴られたような感覚になった。


「先輩たちはお互い別の高校に進学したあと、別れたみたいなんだけど。まさか、ふたりが復縁していただなんて……。ごめん、あたし知らなくて」


椎菜が、私に頭を下げる。


「ううん。椎菜は、何も悪くないよ」


そうだ。あれだけかっこいい先輩に彼女がいたって、何もおかしくないのに。むしろ、いないほうがおかしい。


それなのに、どうして先輩に彼女がいるって、今まで一度も思わなかったんだろう。


突きつけられた現実にまだ気持ちが追いつかず、目頭が熱くなってくる。


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