夏樹先輩、好きでした。
多分先輩は、私のことをからかっているだけだ。
あんなに美人な彼女がいる先輩が、私なんかを本気で相手にするわけがない。
だから……。
「私に見に来てとか、そんなこと言わないでください」
「え?」
「先輩には……っ」
『先輩には、彼女がいるんだから』
口から出かかった言葉を飲み込むと、私は夏樹先輩には渡さないつもりだった誕生日プレゼントの袋を、先輩の胸に無理やり押しつける。
「えっ、これは……?」
「いつかの、パンを奢ってもらったときのお礼です。これで、先輩への借りはなくなったので……」
私は、涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。
「夏樹先輩とは、もう会いません。今まで……ありがとうございました」
「ちょっ……花梨ちゃん!?」
私は一方的に言うと、逃げるように走り出す。