夏樹先輩、好きでした。
それから、更に時が過ぎていき……
私は先輩を校内で見かけることはあっても、まともに話したりすることはないまま、とうとう年が明けた。
気づけば、2月。暦の上では春となった。
「うわ、寒っ……」
放課後。家に帰ろうと、昇降口から外に出た私は、凍てつくような寒さに身震いする。
こんなに寒いのに、暦の上とはいえ春だなんて……絶対おかしい!
ここのところは毎日寒いけど、今日は特に寒い。こんな日は、早く家に帰ろう。
雪が降ってきそうな薄暗い空の下、私の歩く足はどんどん早くなる。
「……あの、落ちましたよ」
そんなとき後ろから、低い声がして振り返ると。
……え。
相手の人の顔を見て、私は心臓が飛び跳ねる。
それは相手も同じだったようで、そこには目を丸くした夏樹先輩が立っていた。