夏樹先輩、好きでした。
私は、先輩に拾ってもらったパスケースを、さっそくスクールバッグにつけようとするが。
あ、あれ?
あまりの寒さに、手が悴んでいるのか。
それとも、先輩と久しぶりに会って緊張しているからなのか……スムーズにつけられない。
「……貸して?」
先輩が私の手からパスケースを取ると、私のスクールバッグにつけてくれた。
「あっ、ありがとうございます」
夏樹先輩は、相変わらず優しい。
「いえいえ。……花梨ちゃん、久しぶりだね」
「お久しぶりです」
どうしよう。先輩と話すのが久々すぎて。
私はドキドキして、また下を向いてしまう。
「あれから、なかなか会えてなかったけど。花梨ちゃん、元気そうで良かったよ」
夏樹先輩が、ふわりと微笑む。
「……っ」
夏樹先輩の優しい笑顔に、胸がきゅっと甘く締めつけられる。
いつの日かと同じ、夏樹先輩の笑顔と優しさに触れて……私の中で再び想いが溢れ出してくる。
どうしよう。私、やっぱり先輩のこと……。