夏樹先輩、好きでした。


「じゃあね、花梨ちゃん」

夏樹先輩は私に笑顔で軽く手を振ると、私と反対の方向へと歩いて行く。



───今日久しぶりに先輩と話して、彼の優しさに触れて……はっきりと分かってしまった。


私は、今でも夏樹先輩が好き。


胸が苦しいくらいドキドキするのも、先輩のことが好きだから。


以前、椎菜に言われた『本当に後悔しないのなら』という言葉が、自分の中でずっと引っかかっていた。


私、やっぱり自分の気持ちに嘘はつけない。


だから、私は決めたんだ。


あと1ヶ月したら、嫌でも夏樹先輩はこの学校からいなくなるんだから。


夏樹先輩が高校を卒業するまでの1ヶ月は、後悔のないように先輩を思う存分好きでいようって。


先輩とエリカさんの邪魔にならない程度に、片思いを続けようって。


そして先輩が高校を卒業するときが来たら……そのときに、先輩への片思いからも卒業しようって。


だから、ものすごく自分勝手かもしれないけど。


先輩が高校を卒業するまでの残り1ヶ月だけで良いから。


先輩のことをまだ好きでいさせて下さい……。


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