夏樹先輩、好きでした。


先輩がため息をつくってことは……やっぱり私、呆れられたかな?


こちらから会わないって言ったのに、今度は会いたいって言うなんて。


「あの、夏樹先輩……」


心臓がどくどくと、忙しなく胸を叩く。


「ああ……良かった。実は、あのとき花梨ちゃんにもう会わないって言われて。もしかして俺、花梨ちゃんに嫌われちゃったのかな? って。あれからずっと、気になっていたから」

「あっ……」


先輩がほっとしたように、胸に手を当てている。


先輩のあれは、安堵のため息だったんだ。
ああ、良かった。私も胸を撫で下ろす。


「本当にごめんなさい。私が、夏樹先輩を嫌いになるなんてことは……絶対にないです」


これだけは、断言しても良いよね?


彼女がいる先輩に、決して好きとは言えないけれど。嫌いじゃないってことだけは、ちゃんと伝えたかったから。


「そう言ってくれてありがとう。俺にとって花梨ちゃんは……可愛い後輩だって思ってる。だから、俺が卒業するまで短い間だけど。改めてよろしく」

「……はいっ!」


< 45 / 60 >

この作品をシェア

pagetop