夏樹先輩、好きでした。
先輩がため息をつくってことは……やっぱり私、呆れられたかな?
こちらから会わないって言ったのに、今度は会いたいって言うなんて。
「あの、夏樹先輩……」
心臓がどくどくと、忙しなく胸を叩く。
「ああ……良かった。実は、あのとき花梨ちゃんにもう会わないって言われて。もしかして俺、花梨ちゃんに嫌われちゃったのかな? って。あれからずっと、気になっていたから」
「あっ……」
先輩がほっとしたように、胸に手を当てている。
先輩のあれは、安堵のため息だったんだ。
ああ、良かった。私も胸を撫で下ろす。
「本当にごめんなさい。私が、夏樹先輩を嫌いになるなんてことは……絶対にないです」
これだけは、断言しても良いよね?
彼女がいる先輩に、決して好きとは言えないけれど。嫌いじゃないってことだけは、ちゃんと伝えたかったから。
「そう言ってくれてありがとう。俺にとって花梨ちゃんは……可愛い後輩だって思ってる。だから、俺が卒業するまで短い間だけど。改めてよろしく」
「……はいっ!」