夏樹先輩、好きでした。
夏樹先輩、好きでした
ついに迎えた、卒業式当日。
体育館での式典が終わり、私は1年生の教室へと戻ってきた。
「3年生が卒業したら、あたしたちももうすぐ春休みだね」
「そうだね」
教室の窓際で椎菜と話しながら私は、窓の外をぼーっと眺める。
外は、絵に書いたような快晴。
校庭の桜の木は蕾が少し膨らみ始めたが、開花まではもう少し時間がかかりそうだ。
できれば夏樹先輩の門出に桜、咲いてくれたら良かったな。
──それにしても、今日までの1ヶ月はあっという間だった。
学校で先輩を見かけると、それだけで嬉しくなったし。先輩に廊下で声をかけられ、目が合ったときはドキドキした。
この1ヶ月は、先輩に会うために学校に来ていたと言っても過言ではない。
その先輩が今日、高校を卒業する。
明日からもう、先輩はこの学校に来なくなる。
夏樹先輩に……もう会えなくなるんだ。