夏樹先輩、好きでした。
「はぁ、はぁ……」
私が走ってやって来たところは、昇降口。
立ち止まった私は息を整えながら、キョロキョロと辺りを見回す。
ホームルーム前だからか、時折そばの廊下を人が通るくらいで、幸い人はほとんどいなかった。
私は、先輩の下駄箱の前に立つ。
そして『久遠 夏樹』と書かれた、下駄箱のネームプレートを確認する。
よし。先輩の下駄箱は、ここで合ってる。
私は、持ってきた白の紙袋からある物を取り出す。
それは、3本の赤いチューリップ。
夏樹先輩へ卒業のお祝いに花を贈ろうと、私が昨日家の近所のお花屋さんで買ったものだ。
3本の赤いチューリップの花束に、
【卒業おめでとうございます。
夏樹先輩の未来に、幸あれ! 荻野より】
と書いたメッセージカードを添えると。
私は、先輩の下駄箱の靴の上にそっと置いた。