夏樹先輩、好きでした。
「花梨! また明日ね」
「うん、バイバイ」
帰りのホームルームも終わり、校門の前で椎菜と別れた私は、駅へと向かって歩き始める。
そう言えば、最後なのに今日は先輩と一度も会って話さなかったな。
せめて『卒業おめでとう』くらいは、直接本人に言っても良かったのかな。
胸が、ほんの少し痛む。
「夏樹先輩、卒業おめでとう。……私も、夏樹先輩からの卒業おめでとう」
空へと向かって、ひとり呟く。
「……ねぇ。『夏樹先輩からの卒業おめでとう』って、なに?」
……え!?
突然後ろから低い声がして、肩がビクッと跳ねた。
まさか今の呟き、誰かに聞かれて……?!
恐る恐る、私が後ろを振り返ると。
「なっ……!」
そこには、私が先ほど下駄箱に入れたチューリップの花束を持った、夏樹先輩が立っていた。