夏樹先輩、好きでした。


「あのさ、花梨ちゃん。ひとりで勝手に、俺から卒業しないでくれる? あと、告白の言い逃げなんてダメだよ」

「えっ?」


『告白の言い逃げ』って。まさか先輩、花言葉に気づいて……?


「このチューリップは、俺への告白じゃないの?」

「先輩、どうして……?」

「俺の祖父母が、花屋をやってて。幼い頃、よく花言葉とか教えられてたから、知ってる。
赤いチューリップの花言葉は、愛の告白……でしょ?」


先輩にここまで言われたら……認めざるを得ない。


「そう、です。私は、夏樹先輩のことが……好きです」


口に出して好きだなんて言うつもりは、1ミリもなかったのに……先輩に言ってしまった。


振られることが目に見えているから、夏樹先輩の顔が怖くて見られない。


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