夏樹先輩、好きでした。


「え。夏樹先輩が、私のことを好き……?」

「うん」


私は、パチパチと瞬きを繰り返す。


うそだ。先輩が私を好きだなんて……そんなことある? だって、先輩には……。


「先輩には、彼女がいるじゃないですか」

「えっ、彼女……?」


先輩が、首を傾げる。


「夏樹先輩は、中学の頃からエリカさんと付き合ってるんですよね……?」


前に、椎菜が私にそう言っていた。


「いや? エリカとは、去年別れたよ? 
実は俺、彼女……エリカに浮気されたんだよね」


先輩が、苦笑いする。


うそでしょ。こんなにもかっこよくて、優しくて。沢山の女子から憧れられている夏樹先輩が、彼女に浮気されるなんて。信じられない。


「でも私、先輩がカフェの前で、エリカさんからほっぺにキスされているのを見かけて……」


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