夏樹先輩、好きでした。
「えっ。あのときのキスを、まさか花梨ちゃんに見られていたってこと? それでもし、誤解とかさせちゃったならごめん」
先輩が、私に頭を下げる。
「俺ね、去年の春にエリカに浮気されて。ショックで落ち込んでいたときに、花梨ちゃんと購買部で出会ったんだよね」
先輩が、「少し俺の話を聞いてくれる?」と前置きし、私に話し始める。
「最初に花梨ちゃんと会ったとき、俺に向けられたキミの笑顔がひだまりみたいで。すごく惹かれたんだ。
それから花梨ちゃんは、気づいたらいつも部活とかで俺のことを見てくれていて。
たまに会って話すようになって……素直ないい子なんだって思った」
先輩が、ふわりと微笑む。
「俺がお願いしたら、ポニーテールにしてくれたり。いつも俺だけを見てくれている花梨ちゃんに、どんどん惹かれていった。学校で花梨ちゃんに会えたときは、いつも本当に嬉しくて」
まさか先輩も、私と同じように会えたら嬉しいって思ってくれていたなんて。
「エリカとカフェで会ったあの日は、話があるって呼び出されたんだ。彼女からもう一度、俺とやり直したいって言われたんだけど……断った。
だって俺、その頃にはすでに花梨ちゃんのことが好きになっていたから」