入学初日にプロポーズされました
「あれ?希穂ちゃん?」


聞きなれない声に名前を呼ばれ、振り返る。

そこにいたのは、予想だにしない人だった。



「あ、やっぱりそうだ。久しぶり~」

「綾世さん?」


「およ?希穂知り合い?」

「……内田界人の兄」

梨桜はほぇ~と声を漏らし、時計に目を向けた。

萊は内田の兄と知るや否やわたしのそばに寄ってきて、綾世さんににらんだ。


失礼なやつだと、腹を殴るが無視される。



「あ、綾世さんこれから暇ですか?」

「え、うん、とくに用事ないけど……」

「じゃあ、この子預かってくれません!?」



「は、!?」

肩を手を当てられ、とんと前に押される。

梨桜は期待のこもった目で綾世さんを、見ている。



なに勝手に話を進めている???


そう言おうとしたわたしを綾世さんの言葉が遮った。

耳を疑う、言葉が。


「うん、いいよ」

「じゃ、お願いしますね~」

とててててて、と萊と遥の手を引いてチケットを買いにいった梨桜を無言で見送った。



萊は最後までこちらをにらんでいた。


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