入学初日にプロポーズされました
「ははっ、……こりゃむじー」

ボソッと呟かれた言葉は私まで届かず空気と飽和した。



「?」

「あ、ううん、なんでもない。そしてもちろん冗談ね」



「さすが兄弟ですね」

「……ぁー、なるほど」


眉を寄せつつ、苦笑いすると綾世さんは喉をならして笑った。


「なに頼むか決まった?」

「あ、はい」


うまく話をすげ替えられた気がする。


注文をし、店員がいなくなると綾世さんはなにかを考える表情でじっとこちらを見てきた。



「お待たせしました」

真正面からにらみあうかのようにお互い見つめ続け、それは店員が飲み物を届けに来るまで続いた。



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